【曲目の手引き】

 

音楽学部ミニコンサート「春のときめき」

 

山本まり子(音楽学)

 

W. A. モーツァルト:アリア〈彼に眼を向けなさい〉K.584

 

バリトン:藪内 俊弥、ピアノ:鳥井 俊之

 

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このアリアは、オペラ《コジ・ファン・トゥッテ》(K.588)に登場するグリエルモ役(バス)のために書かれたものである。第1幕の終盤、フィオルデリージとドラベラの姉妹の貞節を試すため、変装して求愛する場面で歌われるはずであった。しかし、ダ・ポンテの台本によるこの部分けが突出して長かったため、1790年1月26日の初演の際、バランスを考慮して現在の短いアリア(第15番)〈恥ずかしがらずに〉“Non siate ritrosi”に差し替えられた。そのため、この作品はK.584の番号を持つ単独のアリアとして演奏される。

  


D. ミヨー:ヴァイオリン、クラリネットとピアノのための組曲 Op.157b

 

1.序曲

2.嬉遊曲

3.遊戯

4.序奏と終曲

 

ヴァイオリン:坂本 真理  

クラリネット:中村 克己  

ピアノ:山田 昌宏

 

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ダリウス・ミヨー(1892~1974)は「フランス6人組」の一人として知られる作曲家である。20世紀の作曲家のなかでもとりわけ多作だった。彼の創造性は多方面にわたって実りを結んでおり、さまざまな楽器の組み合わせによる数多くの作品がある。今回演奏される「ヴァイオリン、クラリネットとピアノのための組曲」(Op.157b)は1936~37年の作品である。

 

短い「1.序曲でいきなり漂うラテンの雰囲気は、第一次大戦後に滞在していたブラジルでの音楽体験の影響によるものであろう。

 

「2.嬉遊曲(ディヴェルティスマン)」では、各楽器が互いのメロディを模倣しながら、音楽を織りなしていく。

 

「3.遊戯」はヴァイオリンとクラリネットによる楽章。互いのメロディとリズムを軽くキャッチボールをするかのようだ。

 

「4.序奏と終曲」は、ピアノの重い低音が印象的な序奏に始まる。一転して軽やかな終曲に移り、ノリのいいジャズテイストのリズムがいくつか現れると、曲はさらりと閉じる。

 


J. S. バッハ作曲 トッカータとフーガ ヘ長調 BWV540

 

パイプオルガン:松居直美

 

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「トッカータとフーガ」と聞くと、二短調のBWV565の冒頭旋律を思い出す方が圧倒的に多いことだろう。しかし、これを規模の上でも壮麗さの点でも凌ぐと評価されているのが、今回演奏されるヘ長調 BWV540の「トッカータとフーガ」なのである。「トッカータ」はイタリア語のtoccare(=触る、たたく)に由来する流動的な華やかな音楽で、演奏者の技巧の見せどころだ。また、「フーガ」はfuggire(=逃走する)に由来し、主題とその対旋律を絡ませていく。

 

BWV540のトッカータとフーガはそれぞれ、研究により成立年代が異なるとされる。トッカータは、多くのオルガン曲が作られたヴァイマル時代の1714年前後、一方フーガはライプツィヒ在職中の1731年以前(1717~1723年のケーテン時代?)の作ということがわかっている。

 

音楽的にみると、トッカータは3/8拍子の主題がヘ長調、ハ長調で提示されたのち、大胆な転調を伴いながら多様な技法で提示されていく。2/2拍子のフーガは上記のようにトッカータとは関連性がなく、2つのテーマによる荘厳な二重フーガとなっている。